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芸術は,日々の情景や稀有な風景から表現者を通して多彩に生み出される。「表現」という言葉自体は歴史上新しく,「外界に存在する事物を描写,再現,模倣すること」と「無形の内面を有形の形として可視化すること」の両作用を含んでおり,芸術的表現は両者の絡み合いによって成立している。例えば,ある画家は,「日本画は風の色・波形・霧・空の層などの自然現象を表現者が様式美の観点で捉え,それらを線と面,色で表現されたものであり,画家はそのような自然現象の神髄を,複雑で難解で深遠なものとして受け止め,そして主題として心に映し出された内面を有形の形として描いてきた」と述べている1)。 近年の芸術表現には,現代美術と呼ばれる絵画や彫刻といった形式に囚われない多様な表現が存在する。サウンドアートやインスタレーションなど,展示形態は視覚的な造形物に限定されない。表現者は目の前の現象と向き合う際,再び遭遇しないであろう儚い出来事や,その存在にさえ気付かず,通り過ぎてしまう些細な出来事に対し,その時の空気の気配や雰囲気から敏感に現象を読み取り,そこで得た感情をどの手法・技法を使えば最適に表現できるかを考える。表現者の感情は,その時代における文...
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