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2022 Vol.86 No.5 巻頭言

特集 経皮吸収型製剤の現状と将来展望

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巻頭言

活力に溢れSustainableな学会へ

 2022年4月から会長職を拝命するに当たって,化学工学会の運営についての所感を申し述べさせていただきます。21世紀に入った辺りから様々な学会が会員減少とそれに伴う財務状況の悪化に悩まされています。特に本学会では,分野のコアであった国内における新規プロセス開発と社会実装が大きく減少してきたことから,大学における化学工学科や研究室の減少にも拍車がかかった事情がありました。

 一方,2020年末からのカーボンニュートラル(CN)化に対する国際的な潮流は,我が国のエネルギー・化学産業に大きなインパクトを与え,これと重畳してプラスチックなど様々な資源の循環についても,サプライチェーン全体を見渡して動静脈産業連携を視野に入れた研究開発と技術の社会実装が求められるようになりました。CN化も資源循環もこれを実現するカギは正に化学工学にあることは,会員の皆様には改めて申し上げるまでもないことと思います。一方で,2030年温室効果ガス46%削減,2035年プラスチックの単純焼却・埋め立てゼロ,そして2050年のCN化といったGoalsには,これまでとは次元の異なるスピードでの技術開発と社会実装が求められると共に,コンビナート等既存のプロセスとインフラの合理的な転換,バイオマスの原料化を含め第1次〜3次産業間の強い連携などを同時に実現する必要があります。正に化学工学の出番ではないでしょうか。前回のAPPChEで採択された札幌宣言に基づいて,EfficiencyからSufficiencyへの変化を実現する化学工学のあり方を議論して参ります。

 社会課題解決に向けての提言と社会実装を進めるため,Vision2036の構想のしっかりと議論すると共に,これを先取りして水素エネルギー社会実現や産業(エネルギー,化学,鉄鋼,セメント等)のCN化,資源循環に向けた新しい社会・産業システムの検討に化学工学会として貢献すべく,外部との連携を含め課題解決のシステム作りを検討したいと考えています。石飛前会長が主導されてきたように,他の学協会,産業界,自治体などと,コンソーシアム作りを進め,社会実装までの道筋の提案活動をおこないたいと思います。Vision2023を制定して10年が経過して,当時は全く予測ができなかったほど社会環境,社会の要請も大きく変わりました。2021年度にはVision2023の総括が実施され学会で報告されたところですが,Vision2036の策定に向けては,未来に向けて活発な学会活動をおこなうことができるような指針を,しっかりと議論することが必要なのだと考えています。

 化学工学と化学工学会が大きな変化に対応するためには,優れた化学工学人材を継続的に育成することが必要です。化学工学会では化学工学の教科書を新たに発行しました。これを有効に活用するための活動を展開したいと考えています。産業界のリカレント教育も含め,新しい技術開発を実現する人材育成活動をおこないます。また,SNSの進化とZ世代の若者がいよいよ社会人となることを意識し,会員との情報共有の円滑化が必要だと思います。新しい方法を積極的に検討します。

 社会と化学工学,イノベーションと化学工学は世界共通のテーマであり,WCEC,DECHEMA,AIChE,APPChEに対して積極的に貢献し,国際交流を更に進めて参ります。これまでMOUを結んだ各国に加えて,特にAPPChEを通じて東南アジアや太平洋地域の島嶼国との関係の強化に取り組みたいと考えています。また,ダイバーシティ推進,すなわち女性,若手,経営者などの学会活動への参画は学会活動の発展の核であり,一層進めて参ります。

 化学工学会が社会に継続して貢献するためには,学会運営がサステイナブルであることが必要です。会員が学会運営に積極的に関与していただく環境を整備するため,学会運営の可視化と財政基盤の健全化に取り組み,学会活動基盤の再構築をおこないたいと考えています。コロナ,DX,CNの動きの中で展示会に対する興味と期待も大きく変わってきています。2022年度は関西地区で開催される第2回目のプラントショーを成功させ,更に2023年度に向けては学会の財政基盤であるINCHEM TOKYOの再構築の議論を積極的におこなう予定です。

 次期Vision2036の取り組みの最終年には化学工学会は創立100周年を迎えます。1936年に化学機械協会として発足した際の初代会長小林久平先生は,小職が所属する早稲田大学先進理工学部応用化学科の設立にご尽力された方でもあります。小林先生から数えて63代目の会長職に就任するに当たって,我が国における化学工学の重要性をいち早く理解され学会の設立に動かれた小林先生の慧眼と情熱に思いを致し,緊張感を持って取り組んで参りたいと思います。化学工学と学会の未来は,会員お一人お一人にかかっていることは申し上げるまでもありません。会員の皆様が存分に力を発揮していただける学会運営を目指しますので,会員各位からの積極的なご意見を頂戴致したく,ご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い致します。

松方 正彦
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松方 正彦

Toward Vibrant and Sustainable SCEJ

Masahiko MATSUKATA(正会員)

  • 1984年 早稲田大学理工学部応用化学科卒業 1989年 早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了 工学博士 同 年 成蹊大学工学部工業化学科 助手 1992年 大阪大学基礎工学部化学工学科 助手 1996年 同大学 基礎工学研究科化学系専攻 助教授 1997年 早稲田大学理工学部応用化学科 助教授 2001年 同大学 教授

  • 同大学 教授

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Online ISSN : 2435-2292

Print ISSN : 0375-9253

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