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2023 Vol.87 No.8 巻頭言

特集 フードプロセスの現在と未来

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巻頭言

フードテックと3Dフードプリント

 現在,世界は長期化するロシア・ウクライナ戦争,それに伴う食料価格の高騰・食料不足への懸念など厳しい食料問題に直面している。こうした食料問題を解決し,常に安全で豊かな食品を得るために,世界中で様々なフードテックが提案されている。特に注目されているものとして,代替タンパク質(大豆,昆虫粉,培養肉)製造技術,パーソナライズド食品製造技術,フードロス削減技術,3Dフードプリント技術などが挙げられる。内閣府は,挑戦的な研究開発を推進する「ムーンショット型研究開発制度」を新たに開始しているが,その中のムーンショット型農林水産研究開発事業では,「2050年までに,未利用の生物機能等のフル活用により,地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」が目標5として掲げられている。2050年に地球規模で持続可能な食料供給産業を実現するためには,増加する20億人を含む約100億人が満足に食料を消費できるよう,食べられるのに捨てられてしまうフードロスをフル活用することが不可欠である。目標5のプロジェクトの1つとして,筆者らは,3Dフードプリントを中心とする「フードロス削減とQoL向上を同時に実現する革新的な食ソリューションの開発」を2020年から3年間に亘って取り組んだ。

 このプロジェクトでは,図1に示すように,2050年の食卓の姿として,①何を食べるかをAIとの対話により決定,②食事に必要な食材,加工食品などはネット注文で直ちに自動配送,③世界中の調理レシピがクラウド上に保管されており,お気に入りのお店の味,新しい料理などの選択ができることを想定した。また,紙面の都合で図は省略するが,2050年の外食サービスの姿として,フードロス削減とQoL向上が実現し,その文化が定着した未来の幸福なカフェの風景を想定した。①品質劣化しやすい高水分の農産物が近隣のカフェに出荷され,その場で乾燥・粉末化するために常温での長期保存が可能,②規格外の農産物を無駄なく有効活用でき,フードロス削減への貢献が期待される。AIを活用した3Dプリントシステムでは,食材粉粒体の在庫状況をAIがリアルタイムに確認し,提供できる本日のメニューを顧客に提示。顧客はその中から食事を選択し,個人の嗜好・健康データと連携させ,栄養成分の構成や食感・味などをカスタマイズした食事を注文。3D-AIプリントシステムが直ちに顧客にその提供を実現しようとするものである。

 

中嶋 光敏
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中嶋 光敏

FoodTech and 3D Food Printing

Mitsutoshi NAKAJIMA

  • 1976年 東京大学工学部化学工学科卒業
    1981年 東京大学大学院工学系研究科化学工学博士課程単位取得退学
    1981年 九州大学工学部化学機械工学科 助手
    1985年 農林水産省食品総合研究所 研究員
    1990年 同 主任研究官
    1992年 同 研究室長
    2003年 (独)食品総合研究所 食品工学部
    2007年 筑波大学生命環境科学研究科 教授
    2008~2012年 筑波大学北アフリカ研究センター長
    2011年 筑波大学生命環境系 教授
    2019年 筑波大学生命環境系/地中海・北アフリカ研究センター 特命教授
    現在に至る

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Online ISSN : 2435-2292

Print ISSN : 0375-9253

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