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2023 Vol.87 No.10 巻頭言

化学工学年鑑2023 1. 化学工学一般

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巻頭言

「化学工学年鑑2023」の発行にあたって

 恒例の,そして読者の皆様お待ちかねの年鑑を本年もお届けいたします。年鑑は,まず「化学工学一般」の章にて化学産業界の2022年の動向を俯瞰し,次いで化学工学会にて活動する基礎技術分野及び展開技術分野の合計14部会がそれぞれの分野について「国内外の動き」「トピックス」「研究・技術動向」「今後の展開」を紹介するものです。化学工学のあらゆる分野の2022年の動向が網羅的かつ詳細に記されており,読者の皆様にとってご自分の専門分野のみならず,他分野,ひいては化学工学全体がどのような方向に進もうとしているのかが分かる貴重な情報源となっています。改めて,執筆者の方々にはそのご尽力に対し心より感謝申し上げます。

 さて,読者の皆様も肌で感じられているように,ここ数年の私達を取り巻く社会環境の変化は恐ろしいくらい急激です。その理由は,新型コロナウイルスのパンデミック中の生活様式の変化と5類感染症へ移行後の行動・経済の再活性化,ロシアによるウクライナ侵攻の長期化とそれに伴う物価上昇やエネルギー価格高騰などが挙げられると思います。更には気候変動問題対応に関する国家・企業の取り組みは,大きく(個人的な感覚ではたとえるなら指数関数的に)加速・増加しています。エネルギー産業界の端っこに従事する身としては,グリーントランスフォーメーション(GX)やカーボンニュートラル(CN)に関する技術の取り扱いの比率が急激に上がっていることを痛感いたします。しかもそれらの技術の導入に関しては,最早「待ったなし」として研究・開発のみならず実証化ならびに商業化が世界的に計画・展開されています。ただし,これらの技術がスケールアップされて商業化された際の経済性やLCA(ライフサイクルアセスメント),CFP(カーボンフットプリント)といった側面には依然として不透明なところがあります。化工誌の使命の1つは毎号の目次に記しているように「時代に適した貴重な情報を提供する」ことにありますが,LCAやCFPなどは新しい技術が社会実装され定着してゆくための重要なファクターであり,これらについても焦点を当て,お伝えすべきものがあれば積極的に記事化してゆこうと考えています。勿論,GXやCNに関する技術だけが化学工学の中心・最先端ではなく,年鑑にある全ての技術・分野が「主役」です。年鑑を改めて見ると化学工学の理論から実践を通しての幅の広さと奥行きの深さ,そして社会への貢献度の高さに驚かされます。この化学工学という膨大な技術のプールの中から,最先端の情報や技術の潮流を今後どう化工誌に織り込んでゆこうかと日々悩んでいる次第です。

 申し遅れましたが,私は本年度から橋﨑克雄 前編集委員長の後を継ぎ,佐藤剛史 副委員長ならびに編集委員の皆様と共に化工誌の企画・編集を務めています。編集委員は,民間企業・大学・高専・官公庁研究機関・学生会員からの計47名の方々からなり,重化学・エネルギー系,エンジニアリング系,ファイン・医薬系の3つの分科会に分かれて精力的に企画・編集活動をおこなって頂いています。

 その企画・編集にあたっては,軸である技術情報・学会活動の発信のほかに,「持続的発展」「より親しみやすく愛読される誌面へ」の2つをキーワードとして色々な試みをおこなおうと思います。ご存知のように,国内の少子化や理工系離れに伴い,化学工学会の会員数は減退していますが,他の化学・エネルギー分野の学会も同様の悩みを持っていると伺っています。そこで,協働・共創を図るべく他学会との情報交換やコラボレーションによる記事企画を積極的におこない,化学工学の魅力を学会外に発信することで,少しでも化工誌を通じての化学工学会の持続的発展に貢献できればと望んでいます。また持続的発展には,特に若い世代への訴求が必須であり,そのためには諸先輩方から綿々と継承されている化工誌の在り方を引き継ぎながらも,「より親しみやすい誌面」を目指します。具体的には化学工学が魅力的に思えるような,例えば化学工学にまつわる面白いトピックスやトリビア・逸話などを記した新しいコラムの企画や記事の拡充,または座談会の実施を図ると共に,企画に関して斬新なアイデアがあれば積極的に取り入れたいと考えています。

 先にここ数年の社会の変化は急激だと申し上げましたが,それ以上に将来の見通しは(たとえ近い将来であっても)不透明であるようです。その「不透明な時代」に読者の皆様が化学工学について何かを考えたい時,新しい研究や開発,はたまた事業のヒントを得たい時に思わず手に取りたくなるような,いわば羅針盤的な,そしてより魅力的な化工誌となるよう,編集委員会一同尽力してゆきますので,読者の皆様の更なるご指導・ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。アンケートなどを通じての,皆様の叱咤激励をお待ち申し上げます!藤井 重孝

藤井 重孝
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藤井 重孝

千代田化工建設(株)

  • 石油・化学・新エネルギープロセス設計部

  • 令和5・6 年度化工誌編集委員長

化学工学年鑑2023 1. 化学工学一般

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Online ISSN : 2435-2292

Print ISSN : 0375-9253

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