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本年度も,化学工学誌10号で年鑑を皆様にお届けします。新型コロナウイルス収束の兆しが見えず,日々の業務や学会活動も大幅に制限されている状況です。このような状況にもかかわらず,多くの方々に原稿執筆を担当していただきました。各部会などで情報収集や執筆を担当された方々,および取りまとめを担当された編集委員の方々に厚く御礼申し上げます。
私は昨年の4月から本誌編集の副委員長を拝命し,小林克彦編集委員長,編集委員の皆様とともに化学工学誌の編集に携わらせて頂いています。編集委員会は,大学や官公庁などから27名,企業から18名,そして学生会員3名をあわせて合計48名で構成され,3つの分科会に分かれて活動しています。そこでは,編集委員が立案した特集企画について,類似特集や記事の有無,特集全体のストーリーと学協会や企業での最新動向,執筆候補者などの議論をおこない,学会誌に掲載する特集としてまとめていきます。現在は全ての会議がメールとオンラインになっており,委員全員が集まっての議論ができない状況ですが,編集委員の方々のご尽力で編集作業を進めることができています。
10号以外の各号の内容は,先に述べた編集過程を経て,毎年,異なった内容となっています。一方,10号は,編集委員の中に組織された年鑑編集WGと,化学工学会の各部会の協力のもと作成されます。毎年の章構成は基本的に同じですが,そのため,年次比較することができます。巻頭言を執筆するにあたり,バックナンバーより,年鑑の内容,特に,1章の内容を中心に比べてみました。化学産業界の動向に関する内容では,自然災害,バイオマスを含む再生可能エネルギー,シェールガス・オイル,GHG削減,SDGs目標,デジタルトランスフォーメーション(DX)など,産業界だけでなく社会全体に変化をもたらすインパクトの大きい出来事が毎年のようにありました。これらの課題はすでに解決されたものではなく,現在も検討が続けられている内容であり,特に脱炭素を含めたGHG削減により持続可能な社会を実現することは,社会全体として取り組むべき課題に位置付けられています。昨年度末からの新型コロナウイルス感染拡大の影響は,その大きさと質を考えると,これまでとは全く比較にならないものであり,今後しばらく続くと思われます。しかしこのような状況でも,日本の強みである“ものづくり”の強化,それを支えるサプライチェーンの再構築や技能の伝承は必須であり,これらの分野にも化学工学は大きく貢献できると考えています。
化学工学者・エンジニアとして上記分野に貢献するためには,人材育成,すなわち教育活動が重要となります。人材育成センター内に組織された委員会により,産業界からのニーズに合わせた化学工学技術者の継続学習支援プログラムが作成され,大学の学部生から社会人技術者に至るまで様々な世代に対する教育活動がおこなわれてきました。これは,化学工学は化学プラント設計だけでなく,エネルギー,環境,バイオ,機能材料など,幅広い分野で応用され,産業界で必要とされているためであり,資格制度委員会で実施されている化学工学技士(基礎)は,高専の専攻科生から大学生,社会人まで幅広い世代の方々に認知されています。現在,大学では組織改革に伴う旧専攻の統合が進み,いわゆる化学工学という学科・専攻名が無くなりつつある状況ですが,化学工学者・エンジニアの人材育成の出発点として,学部生への化学工学教育の重要性は全く変わっていません。このような現状を踏まえて,化学工学会では,山口猛央先生が中心となり新しい教科書の作成が進んでいます。大学教育に関わる立場としては,学生が化学工学の基礎を学ぶだけでなく,化学工学の興味深い点や面白さを実感し,化学工学の考え方がどのように社会で役に立っているのかを理解できるように講義をおこない,化学工学者を志す学生を少しでも多く育てていきたいと考えています。
現在は,全ての活動に制限がかかっており,コロナの収束方法などもまだ明確でない状況ですが,化学工学会員の皆様への情報提供と皆様の活動の紹介の場として,編集委員と協力し化学工学誌の編集に携わってまいります。最後に,年鑑の執筆と取りまとめにご協力くださった皆様に御礼申し上げます。
**令和2年度年鑑編集WG
髙井 努(アズビル),中澤 光(東北大学),牧 泰輔(京都大学),南 公隆(産業技術総合研究所),百瀬 健(東京大学)
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