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1975年に「化学工学」誌から研究論文が分離され,新たに和文誌「化学工学論文集」が発刊され,現在第46巻を数えています。一方「Journal of Chemical Engineering of Japan(JCEJ)」は1968年に発刊され現在53巻です。両誌とも50年にわたる長い歴史を通して化学工学という学術分野に多大なる貢献を果たしてきたといえると思います。しかし今年は新型コロナウイルス感染症の影響で東京が封鎖されれば,論文誌の発刊が危ぶまれるところでした。幸い最悪の事態にはなりませんでしたが,一日も早い感染症の終息を願わずにはいられません。
さてご存知のように現在両誌とも既にオンライン版が主体になっており,過去に両誌で出版された論文も電子的にアーカイブされており,J-STAGE上で閲覧可能です。投稿から出版に至るまでのプロセスは電子審査システム“ScholarOne ManuscriptsTM”上でおこなわれており,論文のSimilarity Checkなどを通じて論文審査が適正におこなわれるよう努力しています。これまでのエディタおよび査読者のご尽力により,2019年の平均の審査期間はJCEJで2.1ヶ月,和文誌で1.7ヶ月となっています。しかし論文によっては審査が遅れることもあり,ご迷惑をおかけしている会員にお詫びいたします。論文誌編集委員会において審査状況の把握にこれまで以上に努め,審査期間の短縮につなげていきたいと思います。また論文審査にはエディタや査読者の方々に多大なる責務を担って頂いており,心より感謝申し上げます。
2019年の投稿数および掲載論文数は,JCEJでは225件,114件,和文誌では59件,36件でした。JCEJでは最近の事務局の様々な広報活動の結果を反映して,海外からの投稿数はここ5年ほど全投稿数の70%程度で推移し,2019年の海外からの投稿数は151件で全投稿数の67%で,化学工学分野における国際誌の一つとして位置づけられるようになったと考えられます。和文誌の方は残念ながら長期的な投稿数の減少傾向に歯止めがかかっておりません。しかし会員アンケートでは和文誌の利用に対して,一定のニーズがあります。インパクトファクター(IF)もついていて日本語で投稿できる学術雑誌としてまた博士後期課程の学生などが初めて論文投稿できる場として,機会あるごとにPRを重ねて,投稿を促すことができればと考えています。
ところでJCEJへの海外からの投稿数は増えたものの,JCEJの最大の問題はIFが近隣の諸外国の化学工学関係の学会誌に比べ低いという点にあります。もちろんIF値だけで論文誌の価値が決まるわけではありませんが,投稿先を選択する際の重要な因子の一つとなっていることは否めません。2019年のIFはJCEJで0.651,化学工学論文集で0.245です。JCEJのIFがここ数年微増といったところですが,他国の論文誌のIFは着実に増加しています。これらの点を踏まえると,JCEJの現状は化学工学関係の国際誌として認められているものの,その国際的なステイタスを一層高めるための努力が必要です。歴代の論文誌編集委員会において,もちろん現委員会においても,IF値の向上を目指して論文誌の価値を高めるための方策が継続的に検討され,実行されてきました。しかし,その効果は顕著には表れてきていません。この状態を放置したままにしておくことは,本会そのもののステイタスに影響を及ぼすことも考えられます。一方で近隣国の化学工学会の雑誌は国際的な出版社がプラットフォームとなっていることがIF値の向上に大きく寄与しているかもしれません。論文誌編集委員会にもIF向上のためのワーキンググループを設置していましたが,委員会や事務局は日々の論文の処理に忙殺されているため,情報サービスセンター内に抜本的な価値向上策を検討するためのワーキンググループが結成されました。
以上,本会の二つの論文誌の現状について述べてきましたが,結局は会員の皆様の貴重な研究結果を積極的に投稿していただくことが大切だと思います。時節柄,研究活動の制約が大きいとは思いますが,会員のご協力を切にお願いする次第です。論文誌編集委員会では投稿先に選んでいただけるために,論文誌の価値向上にたゆまずに努力して取り組んでいきたいと思います。
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