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高い熱輸送性能を有する沸騰現象において,加熱壁面近傍で生じる蒸発現象が重要であることは知られているものの,沸騰現象全体の熱輸送に対する寄与や蒸発する液体層の形成条件などは未解明なままである。加熱壁面上では,ミクロ液膜の形成・蒸発と固気液三相接触線での蒸発が生じる。図1に示すように,ミクロ液膜蒸発は蒸気気泡が高速に膨張する過程で加熱壁面に形成される薄い液体の膜で,その厚さは1〜10μm程度である。ミクロ液膜が形成されるとその薄さ故に気泡底部の熱抵抗が大幅に低下し,その蒸発熱伝達により固体面の冷却が急速に進行する。固気液三相接触線においては,接触線近傍において相変化に対する気液界面の曲率や極薄の液層内で生じる分離圧などの影響が顕在化する。これらの蒸発現象の総合的な結果として,数mmの大きさで加熱壁面から離脱する蒸気気泡は,壁面近傍のマイクロスケールの現象の影響を強く受けることになる。近年の計測技術や数値シミュレーションの進歩により,これら沸騰中に発生する加熱壁面での薄い液体層の蒸発過程を捉える研究が進んできている。そこで本稿では,特にミクロ液膜蒸発に着目し,最近の研究を紹介する。 ...
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