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2011年にマテリアルズインフォマティクスの大波がアメリカから押し寄せて12年経とうとしている。その大波に日本の産官学が大きく揺れ,データから生み出される様々な価値に気付き始めたきっかけである。ただ,その時に多く聞かれたのは「研究の効率化」,「開発の効率化」に繋がるという金銭面への注目であり,今もその意識は続いている。確かにマテリアルズインフォマティクスがもたらす材料探索の加速化は材料開発のスタイルを変えつつある。今後この流れが研究・開発のカルチャーとなることはあっても,最早後戻りすることはないであろう。
ここで強く意識しなければならないことは,マテリアルズインフォマティクスを支えているのは計測データだということである。それは原料の特性であり,合成された材料のスペクトルも含めた様々な特性でもある。更には材料の作り方を示すプロセスデータでもある。これらの計測データは材料設計のための方向性をもたらす。こうした枠組みが意識できたら,その枠組みの先にあるのは目的特性を満たす材料の自動探索である。ここでの自動化の推進力は例えばベイズ最適化である。データ駆動化学とロボティクスの融合。まさに計測 → 設計 → 合成は目的を持って繋がるデータの流れる姿である。何のための計測か,何のための設計か,設計を合成に繋げるにはどんなデータが求められるのか。こうしたことを考えることでこのサイクルを流れるデータの形が決まってくる。いわゆる材料開発の仮説をこの自動化に仕込んだことになる。この自動化によって,利用したデータの有効性に関する仮説も自動的に検証したことになる。しかしながら,大切なことはこの先に人は何を考えるかではないだろうか。自動化の姿の先にあるものは何か。
計測 → 設計 → 合成サイクルの姿を改めて図1に示した。このサイクルを流れるデータはこれで十分だろうか,探索範囲を広げるには何が必要か,特定の材料開発から分野の異なる材料への展開には,分野間を繋ぐ計測 → 設計 → 合成サイクルの3次元的な展開も必要になるだろう。分野融合のためのデータの形やその流れは,自動化の仕組みとは別に人が考えるべき仕組みと言える。
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