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学会誌である「化学工学」誌(化工誌)は,本号より主力媒体を冊子体から電子版に移行しました。化工誌から研究論文を分離し新たに和文誌「化学工学論文集」が創刊された1975年を化工誌の第一の変革期とするならば,電子版が創刊された本年は第二の変革期に当たると言えます。その電子版第一号の巻頭言を執筆する機会を与えられましたことを大変光栄に思います。化工誌の新たな時代を迎えるに当たり,情報サービスセンターを代表して,化工誌を含む本会の情報サービスの現状と今後について述べさせていただきます。
情報サービスは,学会誌や学術論文誌,書籍等の発刊を通して会員へ情報を提供する主たる学会活動の一つですが,本会においては,化工誌,和文誌と Journal of ChemicalEngineering of Japan(JCEJ)の学術論文2誌がこれを担い,情報提供のみならず,化学工学分野の発展に大きく寄与しています。
化工誌は,創刊以来,化学工学が関連するエネルギー・環境・資源・材料・バイオ等々,その時々に注目されている新しい技術や研究開発に関する最新情報,基盤的な学問体系としての化学工学に関する最新動向と進展に関する記事,さらには学会本部,部会・支部の活動等を取り上げ,冊子体形式で会員に情報提供してきました。一方,近年の情報通信技術の進展やインターネット利用環境の高度化は,情報収集手段やコミュニケーション手段に大きな変化をもたらしてきましたが,本会においても会員への情報サービスの利便性や効率性の視点から化工誌の電子化の議論がなされ,約3年の検討期間を経て今回の電子版の発刊に至りました。当面は冊子体も発行しますが,状況を見極めながら電子版主体に移行する予定です。インターネットの普及により情報源や情報取集手段が多岐にわたるようになった結果,化学工学関連の情報を化工誌以外の媒体から得られることは言うまでもありません。しかし,インターネットの情報は自らアクセスしなければ得ることはできません。化工誌は会員の知るべき情報を,産学官の多彩な編集委員が議論を重ね,特集を総括して情報提供しています。電子化により過去の特集へのアクセスも容易になりますので,読者のその時々の興味に直接応えることができると期待しています。
JCEJが1968年に,また和文誌が1975年に創刊されて以来,両誌のオンラインジャーナル化,電子投稿・審査システムの導入等を経て,現在では審査期間も2か月未満に短縮され,化学工学関連の最新の研究を公表する学術論文誌として,JCEJは毎月,和文誌は隔月に発行されています。特に,JCEJにおいては,そのステータス向上に努め,国際会議におけるプロモーションを積極的におこなう等の効果もあり,最近の年平均投稿数は300を超え,その過半数が海外からの投稿であり,化学工学分野における主要な国際誌の一つとして認識されています。しかし,学術論文誌の影響度の評価指標であるインパクトファクター(IF)の現在の数値は0.627であり,ここ数年横ばいの状態が続いています。JCEJのステータス向上に当たっては,IF値上昇に向けての努力は不可欠ですから,レビュー論文の掲載,アジア地域の同分野の論文誌との連携等,引き続き種々の対策を講じたいと思います。また,学術論文誌のステータス向上に当たっては,IFに限らず,論文誌に掲載された論文中のデータの質の保証が重要であり,例えば論文中の考察,結論の根拠となる研究データの確保と公開が今後必要になるかもしれません。近年のオープンサイエンスに関わる国内外の議論や動向も考慮し,論文のオープンアクセスだけでなく,エビデンスさらには利活用に資するために論文中のデータの保存や公開法に関する議論を始める時期のようにも思います。
ホームページ(HP)は,情報化社会において不可欠な情報発信手段であり,本会の事業及び活動内容を会員並びに社会に対して広報するとともに,学会が保有する情報を会員が有効に利便性良く活用する窓口の役割を担います。特に,個人会員ページからアクセス可能な電子図書館は,これまで刊行した化工誌,論文誌のアーカイブをはじめ,化学工学便覧をはじめとする出版物を保有していますので,これを利用できることは個人会員の大きなメリットでもあります。HPの利用しやすさは,アクセス数に敏感に影響しますので,見やすく,使いやすいHPを目指すとともに,海外への情報発信,海外からのアクセス増加を図るために,英語版HPの内容の充実化の準備も進めています。
以上,“学会の顔”である化工誌,学術論文2誌,さらにはHPを通して,会員の皆様への情報サービスの向上により一層努めますので,引き続きご支援をお願いします。
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