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大学院時代の筆者の研究課題は農村下水道や畜産廃水処理施設で注目されたフロックの物理性を調べることに端を発した。当時,共同研究でお世話になった農業土木試験場の大井節男博士より,水処理の課題を移動現象の基本問題として捉え,Einsteinの熱の分子運動論,その後の科学史の展開に結び付けて考えるという洞察と構想,創造力に富んだ指導を受けた。その過程で出会った材料が完全球形単分散のラテックスコロイド粒子であり,その粒子をモデル材料にフロックの形成過程,形成されたフロックの幾何学的構造,沈降特性や破壊強度,レオロジーに至る物性論を考えることがその後のテーマになった(図1)1)。研究開始直後,化学工学科の松本幹治先生を訪問し物理性の相関的考え方の有効性,フロックの透水性や表面滑りの重要性について教えていただいた2)。土壌や水環境で遭遇する実際の系は完全球形の粒子で構成される系からかけ離れているが,複雑な系では余計なものを捨象,単純化し本質を見極めた思考の枠組を作ることが先決と考えた。モデル粒子の実験から得た結果や経験は,土壌や水環境,生態系や生物資源などの現実の問題を考えるものさしとなり,その後の研究展開の強力な方法論と...
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