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本稿では流体を巧みに制御してシルクの糸を作る生き物にスポットを当てる。そこには,水を溶媒にして熱を使わずに繊維を作る究極の環境適合型生産技術があり,我々人類が持続可能社会を実現するために手本とするべき技術がある。カイコが長繊維からなるシルクの糸を作ることはよく知られている。またクモも,クモの巣を作る時やぶら下がる時に長いシルクの糸(スパイダーシルク)を作る。シルクとは,昆虫に限らずいろいろな節足動物が作る繊維状のタンパク質の総称である。シルクを使う目的は生き物によって異なる。身を守るシェルターとしての繭のため,獲物を捉える道具として,もしくは,移動するための足場や綱として,など。このように用途は異なっていても,いずれの場合もシルクの糸は水には溶けない。雨に濡れたら溶けてしまうような繭や巣では,自然界では使い物にならない。 ところが,繊維になる前には,水に溶けた状態でシルクは存在している。シルクを作るすべての生き物は絹糸腺という器官を持ち,そこでシルクは生合成され,水に溶けた状態で貯蔵されている。水に溶けたシルクがどのようにして繊維になるのだろうか。この疑問は長年多くの研究者の興味の的になってきた。欧米ではク...
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