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2021 Vol.85 No.5 巻頭言

特集 触媒反応プロセスのスケールアップ: 気固系リアクターを例に

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巻頭言

産学連携による反応プロセスの社会実装

 新型コロナが猛威を振るう昨今,これまでであれば当たり前であった産業界の方とのコンタクトが激減しています。現場に近い化学工学という学問分野を大学で教育している立場から言うと,現状は優れた技術の社会実装の大きな妨げになるのではないかと危惧をしています。このような中,産学連携に基づく反応器設計の基礎から社会実装までの本特集号を組むことができましたので,学側の一人として,日頃産学連携活動から受けた経験や印象を紹介したいと思います。
 私は,大学入学時には化学に馴染むことができていない化学工学科の学生としては最も相応しくなかった学生と思っていました。しかし,入学後は,機械工学,情報工学,電気工学の勉強もしっかりと学ぶことができ,その後,化学工学の本丸の単位操作,反応工学の勉強が進むにつれて,数学や物理関連の科目が好きで化学工学科に入れて頂いたことのありがたさを当時は感じました。学生の当時,印象深かったことは,化成品を製造するプロセス一つ一つに基づいた理論と計算を複雑に組み合わせて設計し,プラント設計に入っていけることを実感したことでした。特に,当時ご教示頂いた先生方から,産業界の皆様のご厚意によって様々なエンジニアリングフローシートを勉強する環境を頂いていることを伺い,学部学生ながら大学の勉強が実社会と繋がっていることを実感していました。今では,教える側に回りましたが,学生にプラントについては見たこともないプラントを,すべてを知っているように講義しなければならないことにジレンマを感じています。このため,産業界の方にプロセス見学をさせて頂いたときや,卒業生に入社後係わっているプロセスやプラントを見せて頂いたとき,机上の勉学に基づいて頭に思い描いていたプラントと実際に動いているプラントを比較することで,もやもやしたものが氷解するのを今でも感じており,教育分野での産学連携の恩恵に浸っています。化学工学の醍醐味は技術の社会実装に携わることができ,このことは特に企業では明確ですので,博士前期課程学生にはインターンシップへの参加や本当に化学工学を理解している学生であるというお墨付きを頂ける化学工学技士(基礎)の受験を推奨し,入社後に少しでも企業の足手まといにならないようと考えるようになっています。
 研究分野でも,産学連携の恩恵を非常に受けてまいりました。学位を取得するまでは,理学系の研究室に居たため,全く産業界との連携を意識したこと,ひいては社会実装など考えたことはありませんでした。当時は,製造現場では決しておこなえない方法,また合成しても仕方のない化合物を合成するなど,やりたい放題に研究を進めていました。今から考えると,技術は身に付きましたが,工学部系化学の研究者として,現場に全く目を向けていなかったことには反省するしかありません。現在では,企業の方と連携を組み,社会の役に立つ製造プロセス,製品開発に携わるようになり,以前は論文執筆一辺倒でしたが,最近では特許も意識して,如何にして産業界に貢献できるかを考えるようになりました。工学部系の化学の研究者は産業界と連携して社会実装を意識して研究すべきということを日々強く感じながら研究を進めています。社会実装には,プラントを設置する地域の皆さんのご理解も必須ですので,産学連携,地域貢献を意識して学内運営をおこなうようにもなっています。
 本特集号は化学工学会反応工学部会に関係する先生方と企業の技術者の先生方により執筆されています。反応プロセスを構築するための基礎的な移動現象論,単位操作,反応工学等は大学で教育することができる一方,その社会実装のためには,エンジニアリングフローシート,本格的流動層反応装置,さらにはスケールアップ等については産業界からの情報提供がなければ達成できません。このような背景から,本特集号では,基礎的な部分を大学側で,また現場での応用的な部分を産業界側で解説し,反応プロセスの社会実装の例を示しています。本特集号が反応プロセスの社会実装の実現の一助となることを期待しています。

杉山 茂
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杉山 茂

Social Implementation of Reaction Process Through Industry-Academia Collaboration

Shigeru SUGIYAMA(正会員)

  • 1983年 徳島大学大学院工学研究科化学工学専攻修士課程修了 1984年 九州大学大学院総合理工学研究科分子工学専攻博士後期課程中途退学 1984年 九州大学生産科学研究所教務員 1988年 徳島大学助手 1994年 徳島大学講師 1998年 徳島大学助教授 1999年 カナダ ウォータールー大学理学部客員教授 2005年 徳島大学教授 2018年 国立台湾科技大学客員教授 2020年 化学工学会反応工学部会長

  • 現在に至る

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Online ISSN : 2435-2292

Print ISSN : 0375-9253

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