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地球表層の炭素循環において,海洋堆積物はいわば炭素の終着地としての位置を占めている。海洋堆積物は,生物反応と流体力学によって媒介される地球表層の高速な物質循環(生物地球化学的循環)と,固体地球のプロセスのみに駆動される地圏の緩慢な物質循環(地質学的循環)という,時間スケールの異なる二つのサイクルの結節点となっており,炭素は海洋堆積物中に移行して貯留されることによって前者から後者に乗り換えることになる。海洋堆積物に長期貯留される炭素のフラックスは,無機炭素(炭酸塩)が0.13~0.38×1015 g /年,有機炭素が0.05~0.13×1015 g /年の範囲と見積もられている1)。この量は,例えば生物地球化学的循環の一部である海洋と大気との間の炭素フラックスに比べると1,000分の1程度の規模に過ぎない。しかし地質年代スケールでは,海洋堆積物の炭素貯留量は大気組成(酸素・二酸化炭素濃度)と気候の長期変動に連動して変化していることが認められており,炭素の長期貯留過程が地球環境に対して支配的な影響を及ぼしていることが指摘されている2)。本稿では,このうち海洋堆積物における有機炭素貯留の現状について概説する。 ...
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