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熱や物質の輸送を伴う流れの数値解析技術は,1980年代以降の計算法や計算機の進展,2000年代以降の汎用ソフトウェアの充実と普及により,成熟段階に達しているとの見方もできる1-3)。一方,多相の乱流現象,反応や相変化に関する物理モデルは今なお未完成であり,適切な形で数値計算ソフトウェアに反映されているとは言い難い。これらに共通する特徴として,小スケールの現象が大スケールの振る舞いに決定的な影響因子となる場合が多いことがある。そのため,スケール幅の大きな熱および物質の移動現象を捉えるには,数値計算アルゴリズムに対する親和性が高い形で,小スケールの現象のモデル化をおこなう必要がある。以上の観点から,本稿では,小スケール現象の代表として,透過膜やそれ近傍の濃度境界層での物質輸送あるいは狭隘部での流れの数値計算上の取り扱いと,それらの外側領域における大スケールの流動現象に対する解析手法への組み込みに関して,これまでにおこなわれた研究や著者らの最近の取り組みを紹介し,展望を試みたい。 膜の透過性を利用する膜分離技術は化学工学分野における主要な技術の1つであり,圧力差や濃度差,電位差などを駆動力として,流体中のある特定...
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