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2022 Vol.86 No.3

巻頭言

特集

2030年に向けた化学工学系流体シミュレーション

 英国の Richardson 教授が 1913 年に数値計算を提案して以来,1 世紀以上に亘って流体力学・流体工 学はコンピュータシミュレーションにおける挑戦的課題の一つであり続けた。21 世紀に入るとコン ピュータの性能向上と普及が進み,より多くの工学者が取り組むようになっている。我が国で 2020 年 にスーパーコンピュータ「富岳」によって新型コロナウイルス感染予防のシナリオが策定された事例や, 眞鍋淑郎先生がコンピュータによる気候のシミュレーションモデルを開発された業績によりノーベル物 理学賞を受賞されたことはまだ記憶に新しい。しかしマルチスケールを含み,非線形的であるが故に,流れのシミュレーションは依然として克服すべき技術課題が残っている分野である。
 化学工学誌でも 2010 年代に多くの特集を組んでおり,本分野に対する積極的かつ絶え間ない挑戦が 窺える。2020 年代は加えて,(1)求める計算精度や判断の高度化,(2)物理モデリングおよび離散化手 法の適切な選択,(3)ハード・ソフト利用環境の変化対応,(4)デジタルトランスフォーメーションと の更なる連携強化が主な技術課題になる。このため,産学連携による研究開発と人材育成の継続が欠か せない。そこで本分野における最前線の話題を企画した。まず,研究動向を紹介し,次に学ぶ環境やハー ドウェア・ソフトウェア事情を紹介する。2030 年に向けあるべき技術を議論する一助となれば幸いである。

(編集担当:島田 直樹・百瀬 健)

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Online ISSN : 2435-2292

Print ISSN : 0375-9253

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