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昭和の時代から重要性が叫ばれているにもかかわらず,バイオプラスチックが日本で普及していないことは,誰の目から見ても明らかである。
日本のプラスチック生産量が1千万トン弱で推移している中で,バイオプラスチックは1%にも満たない状況だ。2022年10月までに日本バイオプラスチック協会のバイオプラマークには1,069件,(一社)日本有機資源協会のバイオマスマークには1,570件の製品や商品が登録されているが,日常生活において同マークを目にする機会が限られていると感じるのは筆者だけであろうか。
このような現状も影響してか,2021年1月に策定された日本の「バイオプラスチック導入ロードマップ」に,2030年までにバイオマスプラスチック約200万トンを導入することが明記された。バイオプラスチックは,名称が原料に由来するバイオマスプラスチックと性質に由来する生分解性プラスチックの総称である。同数値目標は,前者のバイオマスプラスチックに対して示されたものであるので注意が必要である。
これを受け,2021年に日本プラスチック工業連盟が中心となり,関連協会及び企業からなるバイオプラスチック利用推進ワーキンググループが設置された。この中の消費者への価値訴求・啓発活動の部門の座長を筆者が務めている。バイオプラスチックにどのような価値があるかというと,まずバイオマスプラスチックでは,バイオマスを原料とすることから石油資源の消費を抑え,カーボンニュートラルとして二酸化炭素の排出量を石油由来品より削減できることである。もう一方の生分解プラスチックは,微生物などの働きによって分解し,最終的には二酸化炭素と水にまで変化するプラスチックであり,ごみの埋立地の残余年数を延ばすことが期待できる。
しかしながら本誌読者も,地球に優しいや環境配慮であると「消費者の気持ち」に訴えても普及しなかったことを再認識するのではないか。このことより同ワーキンググループでは,従来のお堅い内容の活動を見直すことも検討課題としている。
2022年春先からのロシアのウクライナ侵攻に端を発し,食品や日用品の値上げが不可避となり,日常生活に影響が出ている。やはり消費者は価格に敏感である。講演会等でも度々述べているが,バイオプラスチックが日本で普及するかどうかは,やはり価格を如何に石油由来プラスチックに近づけられるかがカギになるのではないか。そう言うのは簡単だが現実は難しいと考える。何故なら,オイルショックや環境規制,バブル崩壊やリーマンショックを乗り越え,乾いた雑巾を絞りに絞って生き残ってきた産業に太刀打ちできると思わないからである。そもそもバイオプラスチックが無くても日常生活に支障が無いことも普及していかない理由の1つであろう。
国際社会に目を向けると,Ellen MacArthur財団/国連環境計画「The Global Commitment 2020 Progress Report」において,プラスチックはリユース,リサイクルもしくはコンポスト処理することが明記された。2022年3月に第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)でプラスチック汚染を終わらせる法的拘束力のある国際結束が同意されたことより,この流れは今まで以上に加速していくと思われる。
新しい社会システムの構築のために生分解性バイオマスプラスチックを活用する考え方もある。生分解性は廃棄時に効果を発する。具体的には欧州で推進されているコンポスト処理である。石油由来プラスチックの代替は価格が単に高くなるだけで社会に受け入れられていないが,まだ普及していない新素材を社会インフラとした「生分解性バイオマスプラスチック資源循環」を構築できれば消費者に説明がつき価格に反映できるのではないか。
「テクノロジー・ロードマップ2023-2032全産業編(日経BP)」での同提案は,次のようなサーキュラーエコノミーのストーリーである。植物や森林を育てそれを原料としてプラスチックを作る,そして廃棄時にはコンポストに変え,土に戻し新しい植物や森林を育てる。コンポスト化の際に発生する二酸化炭素は植物や森林が成長する際に吸収してくれるので差し引きゼロとなり大気中の二酸化炭素量は増加しない。
一般の方々にも理解しやすい循環ではないか。日本は欧州と異なりコンポスト化自体普及していない。しかしながら,新しい社会システムを作るということは,新しいビジネスと雇用を生みだすと共に新しい価格帯を生めることにもなるため,チャレンジする価値のある戦略の1つであると筆者は考える。
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