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少なくとも筆者が携わる領域において,サイエンスは「100%」が苦手である。遠い昔の学生時代,有機化学の反応機構に関する論文を投稿した際に「解明された(elucidated)」と書いて,査読者から「何をもって『解明された』と言えるのか?」と指摘を受けたことを懐かしく思い出す。若い頃のこうした経験は得てしてその後の考え方や価値観に大きな影響を及ぼすもので,サイエンスの世界で「解明された」や「確立された」といった100%を想起させる表現は注意して使わなければならないのだと肝に銘じた。最終的にその論文は,「elucidated」を削除した形で採択された1)。その2年後,今度は逆に査読者からの指摘に従って,投稿論文に「完全に確立された(fully established)」と書いた2)。当時の筆者がカルチャーショックを受けた「完全に確立された」ものとは,ペプチドの固相合成(SPPS:Solid-Phase Peptide Synthesis)であった。 我々人間にとって,何をもって「完全に確立された」と言えるだろうか? 哲学的な議論は別の機会に譲るとして,サイエンスの世界における1つの判断基準は「全自動」になるのでは...
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