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2020年(令和2年)10月26日,開催中の臨時国会の所信表明演説の中で,菅義偉首相は,「我が国は,2050年までに,温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする,『2050年カーボンニュートラル,脱炭素社会の実現』を目指すことを,ここに宣言いたします。」と述べた。先送りしてきた決断を新政権発足時に合わせて表明したものだが,世界の趨勢が既に待ったなしのところまで来ていたとも言える。 大気中の二酸化炭素濃度が上昇しているのは確かである。その主要な原因の一つに,人為的な二酸化炭素の排出が関係している可能性も高い。一方,気温の上昇傾向は今のところ僅かなものであり,“異常気象”も今に始まったことではないので,それらと温室効果ガス(GHG:Green House Gas)との関連を厳密に議論するのは難しいようにも見える。そもそも,二酸化炭素濃度の上昇や気温の上昇が,人類社会にとって損失しか生まないのかという議論もあるが,ここでは,それは置いておく。 問題は,世界がカーボンニュートラルに舵を切ったことである。その根拠について議論することよりも,世界がその方向に進み始めた時に,我が国だけが,別行動を取ることは,最早経済的に...
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